○下妻市障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領

平成29年3月30日

訓令第3号

(趣旨)

第1条 この訓令は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、職員が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。

(定義)

第2条 この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障害 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害をいう。

(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(3) 障害者 障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。

(不当な差別的取扱いの禁止)

第3条 職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として、障害者について障害者でない者と比較した場合に不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。この場合において、職員は、別表に定める事項に留意するものとする。

(合理的配慮の提供)

第4条 職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供を行わなければならない。この場合において、職員は、別表に定める事項に留意するものとする。

(所属長の責務)

第5条 職員のうち、所属長(課長相当職以上の地位にある者をいう。以下同じ。)は、前2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次に掲げる事項を実施しなければならない。

(1) 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その所属する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。

(2) 障害者及びその家族その他の関係者等(以下「障害者等」という。)から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談又は苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。

(3) 合理的配慮の提供の必要性が確認された場合は、その所属する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。

2 所属長は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合は、迅速かつ適切に対処しなければならない。

(懲戒処分等)

第6条 職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者に対し、不当な差別的取扱いをし、又は過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の提供を行わなかった場合は、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、懲戒処分等に付されることがあることに留意しなければならない。

(相談体制の整備)

第7条 職員による障害を理由とする差別に関する障害者等からの相談等(以下「相談等」という。)に的確に対応するため、障害を理由とする差別に関する相談窓口(以下「相談窓口」という。)を障害福祉担当課に置く。

2 相談窓口は、相談等を受ける場合は、障害者等の状況に配慮し、対面のほか、手紙、電話、ファクシミリ、電子メールその他の手段を可能な範囲で用意し、対応するものとする。

3 相談窓口は、障害者等から相談等の内容となる事実の詳細その他必要な情報を聴取し、事実確認をした上で、その相談等が不当な差別的取扱い又は合理的配慮が行われなかったことに当たると認めるときは、人事担当課と連携して、速やかに是正措置、再発防止策等を採るものとする。

(研修及び啓発)

第8条 市は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修及び啓発を行うものとする。

この訓令は、平成29年4月1日から施行する。

別表(第3条、第4条関係)

障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項

第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービス及び各種機会の提供を拒否し、又はこれらの提供に当たって場所・時間帯等を制限すること、障害者でない者に対しては付さない条件を付すことなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。他方、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、積極的改善措置(障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱いをいう。)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱い、合理的配慮の提供等のために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認することなどは、不当な差別的取扱いに当たらない。不当な差別的取扱いとは、問題となる市の事務又は事業について本質的に関係する諸事情が同じであるにもかかわらず、正当な理由なく、障害者を障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。

第2 正当な理由の判断の視点

正当な理由に該当する場合とは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービス及び各種機会の提供を拒否することなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われた場合であって、その目的に照らしてやむを得ないといえるときである。正当な理由に該当するか否かについては、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者又は第三者の安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等の権利利益及び市の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、正当な理由があると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。

第3 不当な差別的取扱いの具体例

不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は、以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに該当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、これらは、あくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

1 障害があることを理由に窓口対応を拒否すること。

2 障害があることを理由に対応の順序を劣後させること。

3 障害があることを理由に書面の交付、資料の提供等を拒むこと。

4 障害があることを理由に説明会、討論会等への出席を拒むこと。

5 障害があることを理由に、市の事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付け、又は特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒むこと。

第4 合理的配慮の基本的な考え方

1 障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号。以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。合理的配慮は、市の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、市の事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。

2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等は、その都度の合理的配慮の提供ではなく、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は、重要である。

3 障害者からの意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサインなどによる合図、触覚による意思伝達等、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。また、障害者からの意思の表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思の表明が困難な場合は、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。なお、意思の表明が困難な障害者が家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴わず、かつ、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときは、法の趣旨に鑑み、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めるものとする。

4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は、異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等は、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

第5 過重な負担の基本的な考え方

過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。

1 市の事務又は事業への影響の程度(市の事務又は事業の目的・内容・機能を損なうか否か)

2 物理的・技術的制約、人的・体制上の制約等を考慮した実現可能性の程度

3 費用・負担の程度

第6 合理的配慮の具体例

第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様なものかつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。

1 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例

(1) 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げなどの補助をする、携帯スロープを渡すなどの対応をすること。

(2) 配架棚の高い所に置かれたパンフレットなどを取って渡し、又はその位置をわかりやすく伝えること。

(3) 目的の場所まで案内する場合は、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩き、及び前後・左右・距離の位置取りについて障害者の希望を聞くこと。

(4) 障害の特性により頻回に離席の必要がある場合は、会場の座席位置を扉付近にすること。

(5) 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があるなどの場合において、その確保が困難なときは、当該障害者に事情を説明し、近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設けるなどの対応をすること。

(6) 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえ、又はバインダーなどの固定器具を提供すること。

(7) 災害や事故が発生した場合は、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボードを用いるなどして、わかりやすく案内し、及び誘導を図ること。

2 合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例

(1) 筆談、読上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いること。

(2) 会議資料等を点字、拡大文字等で作成する場合は、各々の媒体間でページ番号等が異なることがあることに留意すること。

(3) 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カードなどを活用して意思を確認すること。

(4) 駐車場等における案内を通常の口頭ではなく、メモをした紙を渡すなどの方法により行うこと。

(5) 書類の記入を依頼した場合は、記入方法等を本人の目の前で示し、若しくはわかりやすい記述で伝達し、又は本人の依頼があるときは、代読や代筆といった配慮を行うこと。

(6) 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現等を用いずに説明すること。

(7) 障害者から申出があった場合は、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対すること又は漢数字若しくはなじみのない外来語の使用を避け、時刻を24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを必要に応じて適時に渡すこと。

3 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例

(1) 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続順を入れ替えること。

(2) 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意すること。

(3) スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるよう、これらに近い席を確保すること。

(4) 多数の障害者が車で来庁することが見込まれる場合に、庁舎等の駐車場の敷地内において、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更するなどして、その確保に努めること。

(5) 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等による発作等がある場合は、当該障害者に説明した上で、障害の特性や施設の状況に応じた別室を準備すること。

下妻市障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領

平成29年3月30日 訓令第3号

(平成29年4月1日施行)