平成26年に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)が、令和5年に改正・施行されました。
空き家法改正の理由
全国において、使用していない又は使用する予定のない空き家は、平成10年から平成30年の20年でおよそ1.9倍※まで増えています。今後もさらに空き家が増加見込みであること、空き家が周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用や適切な管理を総合的に強化する必要があるため、法の改正が行われました。
※(平成20年)182万戸→(平成30年)349万戸→(令和12年予想)470万戸
改正の内容
今回の改正の中身は、大きく「活用拡大」「管理の確保」「特定空家の除却」の3つの柱となっています。中でも、空き家所有者にとって重大な点は、「管理不全空家等」という新しい枠組みの設定です。従前の空き家法では、特に危険な空き家である「特定空家等」に認定された場合のみ、「助言・指導」、「勧告」、「命令」、「行政代執行」ができるとされていました。今回の「管理不全空家等」は、特定空家になりそうな空き家に対しても、「助言・指導」、「勧告」を行うことができるようになりました。「勧告」措置が取られた場合には住宅用地特例(土地の固定資産税が最大6分の1まで減額される特例)から除外されてしまいます。
1.活用拡大
(1)空家等活用促進区域
- 市区町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進
⇒安全確保等を前提に接道に係る前面道路の幅員規制を合理化
⇒指針に合った用途に用途変更等する場合の用途規制等を合理化 - 市区町村長から所有者に対し、指針に合った活用を要請
(2)財産管理人による所有者不在の空家の処分
(3)支援法人制度
- 市区町村長がNPO法人、社団法人等を空家等管理活用支援法人に指定
- 所有者等への普及啓発、市区町村※から情報提供を受け所有者との相談対応
※事前に所有者同意 - 市区町村長に財産管理制度の利用を提案
2.管理の確保
(1)特定空家化を未然に防止する管理
- 特定空家になるおそれのある空家(管理不全空家)に対し、管理指針に即した措置を、市区町村長から指導・勧告
- 勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1に減額)を解除
(2)所有者把握の円滑化
- 市区町村から電力会社等に情報提供を要請
3.特定空家の除却
(1)状態の把握
- 市区町村長に報告徴収権(勧告等を円滑化)
(2)代執行の円滑化
- 命令等の事前手続を経るいとまがない緊急時の代執行制度を創設
- 所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収
(3)財産管理人※による空家の管理・処分(管理不全空家、特定空家等)
- 市区町村長に選任請求を認め、相続放棄された空家等に対応
※所有者に代わり財産を管理・処分。 (注)民法上は利害関係人のみ請求可
空家の適正管理を怠ると…
空き家を適正に管理しないでいると、建物の劣化や立木等の越境、汚水の流出、悪臭の発生、野生動物の侵入などが発生する恐れがあります。そのような空家を把握した場合には、市で現況を調査し、必要に応じて管理不全空家・特定空家等の判定を行います。
管理不全空家等と判断され、勧告措置がとられた場合には、住宅用地特例が除外されるため、措置の翌年から土地の固定資産税が高くなる可能性があります。さらに、特定空家等に認定された場合には、勧告後に命令措置(従わない場合は50万円以下の過料)となり、最終的には行政代執行となり、所有者等の情報を公表したうえで、市で空き家の危険個所を排除します。行政代執行により要した費用は、もちろん空家所有者(所有者が死亡している場合にはその相続人)が負担するものとなります。行政代執行に要した費用の支払いがされない場合には、税金を滞納したときと同様に財産の差押えとなる場合もあります。
【国土交通省】空き家対策特設サイト「空き家の問題とは?法改正について」